INDEX NOVEL

秘密のピーチパイとチェリーボンボン 〈 9 〉

※ 性描写があります。未成年の方はお読みにならないでください。

「ご、めん…なさ、い〜〜。ごめん、なさ…、いぃ、うえっ、ええっ…ん…」
「ちょっ、マキ…?」
 突然しゃくり上げながら謝り出した僕に、泰治はすっかり面食らってしまい、行為を中断して僕の上から下りると、「どうしたんだよ?」とオロオロしながら尋ねた。
「うえっ、ば、く…、本当は、おっ、お、お…とこ、なの〜〜、うえぇ〜〜」
「はぁ? えっ? お琴? 何だそれ…」
「ちがっ、うぅ〜…。お、琴じゃなくて、お、と、こ…なのぉ!」
「男? 誰が?」
「ぼ…、僕が〜〜」
「はあぁ〜〜?」
 しゃくり上げて切れ切れにしか喋れないから、なかなか伝わらなかった僕の告白は、ようやく泰治に届いたようで、呆気にとられた顔で僕を見つめた。
 僕はこのあと起こるだろうどんな事態にも、耐えなきゃいけないと覚悟して、身体を起こすと泰治の前に向き直った。
「だ、から、ごめん…。駄目、なんだ……」
 怖かったけど、ちゃんと泰治の目を見てそう言うと、泰治は怒っているとも困っているともつかない顔で、「嘘つけ…」と呟いた後、むんずと僕のオパッイを掴んだ。
「ひゃっ!」
「こんな立派なもんついてる男がいるもんか!」
「ちょっ…と! つかまないでよ!」
 胸を掴んでいる泰治の手首を退けようとしたけど、逆に腕を取られて引き寄せられた。
「作りモンじゃないだろう、コレ? なのに、何でそんな嘘吐くんだよ? そんなに俺が嫌か?」
「違う! 泰ちゃんが、嫌とか、そんなんじゃなくて、男だから、できないの!」
「だから、嘘吐くなっ、ってんだろ!!」
 怒鳴りながら腹立ち紛れに胸を強く握られて、僕は痛さに耐えられず叫ぶように言い返した。
「嘘じゃないもん! チンコ付いてて、穴開いてないんだから、男に決まってるでしょ!!」
「はっ?」
 泰治は聞き違えた時のような、意味が分からんって顔をして首を傾げた。
 僕は意識が削がれて力が抜けた泰治の腕を振り解き、その場に立ち上がった。泰治は怯んで後ろ手をつき、唖然として僕を見上げている。
「よっ、よく、見てよね!」
 心臓がバクバクして膝がガクガクしたけど、こうするしか納得してもらう方法はない。意を決して泰治の目の前で短パンごとパンツを下ろし、どうだっ、とばかりに腰を突き出した。
「ひゅっ!」
 息を呑むとはこの事か、というような息の音をさせて、泰治は瞠目して僕のあそこを凝視した。
 幽霊とか、ツチノコとかを見たら、人はきっとこんな顔をするんだろうなって、泰治の顔を見ながら徐々に冷静になった。僕の貧弱なモノに一直線に注がれる泰治の視線は痛いくらいで、ものの一分と経たないうちに居たたまれなくなり、ずり下ろした短パンを引き上げようとしたら、泰治に短パンを掴まれ、足の下まで一気に下ろされてしまった。
 しかも、さっきよりも近い位置からしげしげと眺められ、僕は恥ずかしくて咄嗟に手で前を隠したけど、すぐにその手は外された上に、萎れた百合の蕾みたいなそれを、きゅっと指先で摘まれた。
「きゃっ!」
 摘むだけならまだしも、引っ張ったり揉まれたり、上下に振ったりするものだから堪らなかった。
「は、離してよ…」
 懇願するように小さく言うと、泰治はひとり言のように「こっちも、作りモンじゃ…ねぇ…」と呟いた。
「だから、僕…本当は……」
 男なんだと言う前に、泰治は僕をギッと睨みつけ「お前…、俺たちを――」と言ったけど、僕はみなまで言わせなかった。
「僕だって、好きで女のフリしてた訳じゃないよ!! みんなを騙すとか、そんなつもりじゃなくて…。でも、胸が大きくなっちゃったんだもの!!」
 絶叫して泰治の前にしゃがみ込み、泰治の目を見ながら必死になって言い連ねた。
「胸、取りたいって頼んだけど、うち、貧乏だからって…。保険がきけば、たいした金額じゃ、ないのに…、妹ばっかり、お金かけてさ…。だから、登校拒否して、そしたら、親が、僕を、お、叔母さん、とこ…に…」
 どうして叔母さんのペンションへ来たのか、どうして女のフリをしているのか、全ての経緯を説明した。もちろん、どんなに言い訳したって、泰治の男の純情をもてあそんだ事に変わりないけど、最初からそんなつもりじゃなかった事だけは、どうしても分かって欲しかった。
 本当に今更だけど、僕は泰治に嫌われたくなかった。
 泰治は硬い表情でじっと聞いていたけど、僕の必死の説明も虚しく、その表情は緩む事がなくて、怖くて、哀しくて、言い訳を続けながら、涙が溢れて止まらなくなってしまった。それでも、泰治は何も言ってくれなくて…。仕舞いにはしゃくり上げながら、ごめんなさい、ごめんなさいと繰り返すしかなくなってしまった。
「…わかったから、もう泣くな」
 しばらくすると、泰治はそう言ってくれたのだけど、ボソッと呟かれたので、自分の嗚咽でよく聴き取れなかった。言われた意味が分からないから詰(なじ)られたと思って、僕がまた「うぅ〜〜」っと新たな嗚咽を漏らすと、泰治は焦ったようにがばっと僕の頭を抱え込み、耳元で「もう泣くな」と囁いた。
「俺は、お前に泣かれるの、弱いんだよ…。それに、騙してたんじゃねぇのも、分かったから」
 心底弱ったと言うようにため息を吐いた泰治に、許してもらえた嬉しさのあまり、僕は自分が素っ裸なのも忘れて、「泰ちゃん、ありがとう!」と叫んで泰治の胸に抱きついた。当然、オッパイがぴったりと泰治の胸にくっついて、泰治も僕も一瞬で硬直した。
 泰治はTシャツを着たままだったから、直にくっつかなくて済んだんだけど、「ごめん!」と叫んで離れようとしても、泰治は僕の身体を離してくれなかった。
「そりゃ、こんなデカイのついてりゃ、イロイロ大変だよなぁ……」苦笑いしながらそう囁いて、「なあ、もっとよく見せてくれよ」と言った。
「えっ?」
「男だってのは分かった。さっきも触ったし、疑ってる訳じゃない。でも、自分できちんと、もっかいよく確かめたい」
「確かめるって…」
 どうするの、と訊かなくても薄々分かっていたけれど、「電気点けて、ちゃんと見たい」と言われた。やっぱり…と内心ため息を吐きながら、僕は仕方なく了承した。

 泰治はベッドから下りると、開けっ放しだったカーテンを閉めて、クーラーのスイッチを入れた。部屋に入ってすぐ、事に及んでしまったから、電気も何も点けてなかった。明かりは側面の窓と天窓から入る月の光りだけだったけど、それだけでも結構よく見える。
 ベッドに戻って来た泰治は、ベッドヘッドに取り付けたスタンドのスイッチを押した。
「マキ、横んなれ」
 命令され、大人しく言う通りに仰向けに寝そべると、泰治は傘の向きをずらして、ベッド全体を照らせるように調節した。眩しいのと恥ずかしいのとで、僕は思わず目を閉じた。
 クーラーの送風音と、泰治が服を脱いでいるらしい衣擦れの音が、やけに大きく聞こえる。ずっと暑い中にいたから、肌はしっとり湿っていて、その上を涼しい風が通り過ぎるだけで、肌がざわりと粟立ってしまう。
 ベッドが傾いだので、泰治が乗って来たのが分かった。緊張して身体が強張るのと同時に、何もしてないのに、自然と乳首が勃っているのが分かった。嫌だな、どうしようと思う間もなく、泰治にそこを摘まれた。
「触るの?」抗議するように言うと、「触らなきゃ、確かめらんないだろうが」と、当然のように言われ、僕は口を噤んだ。拒否権はもとよりないし、好きなようにさせないと、泰治はきっと諦めてくれないだろう。
 そう諦めはしたけれど、あんまり弄られたら、さっき押し倒された時みたいに、すごく感じてしまうのでは…との心配は、大当たりだった。
「お前のここ、すごく大きいな…。それに、色が薄くて、すげぇ奇麗だ」
 舐めたり吸ったりはされないけど、息がかかるくらい近くで見られているし、指先で乳首や乳輪を撫で回すから、またしても股間が反応してしまう。おまけに…
「こんなデカくて柔らかいのに、全然垂れないって、すげぇよな〜…」と、揉んだり揺すったりしながら、いちいち関心したような声を出すから、恥ずかしくって顔が熱くなってしまう。
「泰ちゃん…」
「ん? 痛いか?」
「痛くはないけど…」
 恥ずかしいから言わないでと言おうとしたら、泰治がぱくっと乳首に吸い付いた。
「や、あぁん!」
 最初の時と同様、舌先でころころと乳首を転がしながら、指で柔らかくオッパイを揉み込まれる。反射的に身を捩ると、泰治の身体が横から乗り上げて押さえ込まれてしまった。
「気持ちいいんだろ? ここ。自分でする時も触ってるのか?」
 少しいやらしい響きを混じらせて泰治が聞いた。僕は猛烈に首を振ったけど、「嘘つけ」と言って、勃起している竿を弾かれた。
「ひゃうっ!」
 僕が素っ頓狂な声を上げると、「男だから、隠しようがないよな?」と、“ 男だから ” の部分を強調してクスクス笑った。正直に言えと迫られて、僕は半泣きになりながら「気持ちいい…」と白状したけど、胸を自分で触ったりしない事だけは、はっきりと主張した。
「何で触んないんだ? 気持ちいいなら触ればいいのに」と泰治が呆れたように言うので、僕は泰治を睨みながら「なければいいと思ってるのに、触る訳ないじゃない!」と八つ当たりした。
 泰治は、はっとした顔をしたあと、「悪い…」と言って僕の頬を撫でると、指先で僕の目尻の涙を拭いながら、「泣くなよ…」と優しく言った。
「なんで男なのに、胸があるのか…とか、よく分からんけど…。でも、他にもあるじゃん。意味不明な器官って」
「ほか?」
 そんなのあったっけ、と思いながら聞き返すと、泰治は起き上がって僕の足の方へ近づき、
「膝、立ててみ?」と言った。言われた通り膝を立てると、泰治は片手を僕の尻の下に差し込み、尾てい骨を触った。
「昔、猿だった名残だろ? お前はあんまり出てないけど、俺は結構出てるよ。だから、尻もちつくと脳天に響くほど痛てぇよ。体育の授業でサッカーするじゃん、転けるたんびに、なけりゃいいのにって思ったぜ」
 言いながら、立てた膝を開いて足の間に入り込む。あっ、と思った時には竿を握られていた。
「男のオッパイは無用の器官だけど、それで、ココが、こんなベトベトになるくらいイイんなら、どんどん、使えばいいんだ」
「やあっ、やぁ…たい、ちゃん…」
 そこを他人に触れられるなんて! しかも、いきなり扱かれるなんて! き、気持ちいい〜〜!!
 生まれて初めて経験する痺れるような激しい快感に、腰を振って逃れようとしたけど、足は閉じられないし、泰治の右手が僕の下腹を押さえ付けているから、身動きが取れない。
 さっきからずっと胸を弄くられて、泰治の言う通り、先走りで漏らしたみたいに濡れているのは分かってた。泰治の手はスムーズに上下し、ぬちゃぬちゃと、いやらし水音を立てている。恥ずかしくて嫌なのに、裏側の淫らな気分も煽られて、ひたすら喘ぐしか熱を発散する方法が分からない。
「あっ、あんっ、あっ、あぁ…たい、ちゃ……いっ、ちゃ、う……」
 目の前がチカチカして、もう限界だと思ったけど、泰治の手の中で放ってしまうのには、強い抵抗があった。気持ち悪いと思われたらどうしよう。僕は射精も普通の人とは違うから。
「離してよ、も、でちゃ、うぅ〜〜」
 そう訴えながら手を伸ばし、泰治の手を掴もうとしたけど、二の腕でオッパイを挟み込んでしまい、厚みが邪魔で上手く手が届かない。泰治は僕の奮闘を尻目に、逆に激しく扱き上げたから、僕は堪らず身体中を振るわせて、噴水のように透明な体液を吹き上げた。
 最悪だ…。多分、おしっこしたように見えたと思う。
 僕の精液は白くない。しかも、粘度が薄くて先走りとそう変わらない。家庭の医学書でこれが普通じゃないと知った時も、ショックで随分落ち込んだ。だから、この事を知ってるのは、悩み抜いて相談した叔父さんだけだ。叔父さんは気にするなって言ってたけど、泰治はどう思っただろう。
 人生お初ってくらいの絶頂感は、呆気なく消え失せて、残ったのは絶望的な羞恥と虚脱感。自然と涙が零れ落ちた。
 怖くて目を閉じてしまったから、泰治がどんな顔をしているか分からない。ただ荒く息を吐いていると、萎えた僕のそこから手が離れ、精液が飛び散った下腹を手で撫でられ、恐る恐る目を開けた。
「すげぇ…エロい…」
「!」
 僕の驚きを他所に、泰治は紅潮した顔で嬉しそうに言いながら、精液が着いた指で僕のささやかな睾丸をくすぐり、そのままするっと一直線に肛門まで滑らせた。そして、「本当に、ないんだな…」と少し残念な口調で呟いたあと、「でも、こっちがあるか…」と肛門の周りをくるくると撫でて、ずぶっと指を差し込んだ。
「ひっ! うぁっ、あぁ、ん……」
 放ったばかりで、全ての刺激が痛いくらい感じるのに、いきなり根元まで埋め込んだ指を、遠慮なく動かすものだから、僕は悲鳴を上げて尻が持ち上がるくらい仰け反った。
「ごめん! 痛かったか?」
 すぐに指を抜いてくれたから、僕はまた脱力してクッタリとベッドに沈んだ。泰治が大丈夫かと声をかけて来たけど、もう返事をする元気もなくて、仕方なく鼻から「くぅん(うん)…」と息を抜いたら、泰治が突然、僕の上に飛びかかって来た。
「やべぇ…、俺、おかしい…。マキ、俺、駄目だ。お前の事、諦めらんねぇ!」
 そう鼻息荒く捲し立てながら、巨大な一物を僕の精液塗(まみ)れの腹の上に、何度も何度も擦り付けた。
「お前が男だって、ちゃんとこの目で確認したはずなのに…。ここ、萎えるどころか、治まらねぇ…」
 泰治は唖然としている僕の腕を取って、自分のそこに触らさせた。僕のとも、叔父さんのとも全然違う。まるでエイリアンみたいだと思った。
 だって、熱くてビクビクしてて、別な生き物みたいなんだもの。ごくんと生唾を飲み込んで、恐る恐る幹に浮き出た太い血脈に指を這わせた。
「うっ、あっ…」
 泰治が呻いたのですぐに指を離したけど、その善がり声は、何とも言えない高揚感を味あわせた。
「気持ち、いいの?」
 両手で包み込むように泰治のそれを撫でた。僕の放った精液を擦りつけたから、濡れてはいるけど、量が少なくて滑らかには動かせない。これでは痛くしちゃうだろうと、僕は、鈴口から零れそうになっている汁の玉を指先で塗り広げた。泰治はビクリと震えて「ああ…」と吐息を漏らした。
「ねぇ、僕のに触って…、気持ち、悪く…なかったの…?」愚問だけど、確かめたかった。
「それを、言ったら…、俺の方が、よっぽどグロイだろ…」
 言いながら泰治は腰を突き出すように動かしたので、僕は両手の指を泰治の張り出したカリの下で固定してやった。男同士だから、どうしたら気持ちがいいかツボを心得ている。裏筋を親指で撫で上げると、泰治は「はっ、あぁっ…いい……」と更に大きく声を上げた。
 不思議な事に、僕はまた性的興奮を覚えた。自分の行為が相手を喜ばせているのだと思うと嬉しかった。それに何より、人とは違う僕の何もかもを、泰治が厭わないでくれるのが嬉しかった。
 泰治をもっと善がらせたくて、片手の指を滑らせて凝り始めた陰嚢を、揉み込むように転がした。泰治は呻きながら上体を前に倒し、片手をついて身体を支えると、もう片方の手で僕の片側の胸を揉み出した。
『男って、オッパイが好きなんだな…』と、呆れつつも感じてしまう。触られただけで勃起した乳首を摘まれ、反射的に「はぁ…ん…」とため息を漏らすと、僕の手の中の泰治がビクリと震えて、じんっと熱くなった気がした。
 僕が興奮するのと一緒に、泰治も興奮するのが不思議だったけど、同時に、すごく愛しいと思えて胸が熱くなった。 なのに……
「なあ、お前、他に好きなやつ、いんの?」泰治がそんな事をいうから、僕は少し熱が冷めた。
「ううん…。いないよ」
「今までに、誰、好きんなった? やっぱ、女?」
「誰かを好きになった事なんて…ない。身体、こんなだから…」少しイジケタように言うと、泰治が僕の上に覆い被さって来た。
「俺の事は、嫌いか?」と耳元で囁く。僕は「好きだよ」と即答した。
「でも…」
「男だから駄目だって、お前、言ったよな。けど、俺は、男だからって、全然、駄目じゃねぇよ」
 僕は目を見開いて泰治を見た。泰治は吐息がかかるほど僕の顔の傍で、じっと僕を見つめていた。僕はその顔を見ながら首を振った。
 男同士じゃ、子供も出来ないし、結婚も出来ない。よしんば付き合ったとしても、叔母さんや叔父さんはともかく、泰治のおじちゃんや恭平さんには、受け入れられないだろうし、反対されるに決まってる。
「俺、中坊の頃から、ずっとお前が好きだった」
「泰ちゃん…」
「ずっと、つうのは嘘だな。妹みたいに思ってた時期もあったし、他の女とも付き合った。けど、やっぱり、お前じゃなきゃって思ったんだよ。そりゃ、最初から男だって分かってたら、こんな風に好きにはなってねぇかもしれねぇけど…。でも、男だって聞いても、今更、どうにもなんねぇくらい、お前が、好きなんだよ。でなきゃ、こんなんなるもんか…」
 そう言って未だ硬く猛ったモノを、再び僕の下腹に擦り付けた。
「お前が達くとこ見て、すげぇ興奮した。おかしい…と思うぜ、自分でも。でもそれは、“ お前 ” だからだ。俺は、お前が男だろうと、女だろうと、関係ねぇ。けど、お前は? やっぱり、駄目か? どうやっても俺の事は、男だから、好きになれねぇか?」
 絞り出すように懇願する泰治の声に、堪らない気持ちになった。
 僕は今まで、恋愛感情を抱く時って、クイズの答が分かる時みたいに、ピンッとひらめきがあるんだと思っていた。要はときめくって事だけど、それは最初から起こるものだと思ってた。
 だから、泰治が男だという事実だけでなく、ときめかない泰治の事は、友だち以上に想えないと決めてかかっていた。でも、ここ一ヶ月、上手く断る口実を見つけるために、ずっと泰治の事を考えていたせいで、泰治が今まで、どんなに僕の事を見つめてきたか、逆に思い知る事になって…。
 泰治は、叔母さんと叔父さん以外では、この世で一番、僕を想ってくれている。そして、それがすごく嬉しくて、満たされる事に気づいてしまった。
 もしかしたら、単にほだされて、流されているだけかもしれない。だけど、本当に泰治が駄目だと思うなら、泰治の男根に、僕はこんなにも興奮するだろうか……。
「駄目じゃ、ないよ…」
 僕は、泰治のモノを再びゆるゆると扱き始めた。不意打ちだったからか、泰治は「うっ」と呻いてぎゅっと目を閉じた。その反応に気を良くして、もっと激しく扱きながら「僕も、興奮する…」と囁いた。
 それを聞いた泰治の目が、カッと大きく見開かれたと思うと、噛み付くようにキスされた。
 熱くて太いアレみたいな舌が、僕の舌を抱くように絡み付いて、僕はまた目を回しそうになったけど、苦し紛れに泰治のをきゅっと握ると、ビクッと震えて唇が離れた。
 今度は逆に、僕が泰治の唇に吸い付いて、何度も何度も音をたててキスを繰り返した。
 泰治の口角が嬉しそうに上がって、笑い声を漏らしながら「好きだ…」と囁くのが嬉しくて、僕も「好き」と繰り返しながら、泰治の分身を撫で回した。
 泰治はキスしながら唇を顎の方へずらして行き、同時にまた僕の胸を優しく揉み出した。ぎゅっと中心の突起を押し出すように握って、萎えて陥没していた乳首を舌先で舐め回すから、すぐに硬く凝(しこ)って官能のスイッチに変化する。
「あっ、あっ、あっ…」
 一度射精してしまったから、すぐには反応しないと思っていたけど、僕の小さな陰茎は胸からビリビリと信号を受けて、あっと言う間に反り返り、鈴口から透明な蜜を滴らせた。
 泰治のを扱く指の動きはすっかりなおざりになって、自分のを触りたくて仕方なくて手を伸ばすけれど、泰治の大きな陰嚢(ふぐり)が、関所みたいに邪魔をして指が届かない。
「泰ちゃん、さわってよ……」恥ずかしさはあったけど、堪らず泰治に懇願した。
「ああ…、気持ち良くしてやるぜ」
 泰治はしゃぶっていた乳首からチュッと音をさせて口を離すと、僕の隣りに横向きに寝そべって、僕の身体も向かい合うように横向きに起こした。何をするのかと思っていたら、僕の腰に片足をかけて引き寄せ、自分の股間と僕の股間を寄り添わせ、両手で二本の陰茎を握って扱き出した。
 僕はビックリしてその光景に目が釘付けになった。
 鉄火のように赤く張り詰めた泰治のそれと、つるりと白いキノコのような僕の分身が、互いの体液でぬるぬると濡れ光る様は、目眩がしそうなほど淫猥だった。
 見ているだけでも、鼻血が出そうなほど興奮したけど、泰治の竿に浮き立った血脈の凹凸に、僕のがコリコリと擦られて、じっとしてられないくらい気持ち良い。
「あ、あああぁ…ん……」
「マキ、首に、つかまれ…」
 僕が腰を振って暴れるから、足だけでは支えられないんだろう。泰治に言われるまま首に抱きついた。汗で湿った胸と胸が張り付いて、ぴったりと吸着する。揺すられる振動で、オッパイの先も擦れて気持ちがいい。
「マキ、キス…」掠れる声で囁かれ、操り人形みたいにキスすると、泰治が今まで見たことないような優しげな顔で「好きだぜ…」なんて微笑むから、胸から、きゅうぅっと、きしむような音がした。同時に激しく扱かれて、はっと息を詰めて目を閉じると、もう出ないだろうと思っていたのに、膀胱辺りから絞られるみたいに体液が放出した。
「うっ、んん〜〜……」
「くっ、はっ、はぁっ……」
 泰治も同時に痙攣しながら、びくっ、びくっ、と何度かに分かれて白濁を放出し、それが僕のにかかる熱を感じて目を開けた。
 初めて見る真っ白な精子が、僕の腹やら陰茎の上を、たっぷりと濡らしているのを見て、僕はここに来て初めて、泰治と “ どうにかなった ” 事を実感した。
 頭に叔母さんの困った顔が思い浮かんだけど、耳元で「はぁ…」と満足そうな泰治の吐息が聞こえた途端、掻き消えてしまった。
 僕は泰治の首筋に顔を付けると、同じようにお腹から大きく息を吐き出して、嬉しいような恥ずかしいような、そして、ちょっとだけ後ろ暗い幸福感に満たされて、ゆっくりと瞼を閉じた。

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