INDEX NOVEL

秘密のピーチパイとチェリーボンボン 〈 15 〉

※ 性描写があります。未成年の方はお読みにならないでください。

 泰治は僕をベッドに下ろすと、すぐさま覆い被さって激しくキスをした。
 口の中を息継ぐ暇もないほど愛撫されて、じわっと先走りが流れ出した。雫が竿を伝う感触に慌てて唇を離すと、泰治のシャツにしがみついて頼んだ。
「泰ちゃん、脱いでよぉ……」
 また服を汚して裸で帰す事になったら嫌だと思った。
「ん……」
 泰治は起き上がると一旦ベッドから下りて、自分が持って来た紙袋の中身をベッドの端にぶちまけた。僕はその中身が気になって、上体を起こして荷物を確かめた。
 割と大きめなジェルのボトル。未開封だ。
 コンドームの箱。こちらは開封済み。ちょっとムッとした。
 あと、丸い玉が数珠繋ぎになった三十センチくらいの棒状の…ディルドっていうんだっけ。動画で見た事があるけど、実物を見るのは初めてだ。
 その他、大サイズのウエットティッシュとバスタオル。そして、ゴミ用のビニール袋が何枚か入っていた。なるほど、重たい訳だ。
 一通り確かめて、僕の目はお初にお目にかかるディルドに釘付けになった。これがお尻に入るのかと思うと、怖いような楽しみなような、何とも言えない興奮を覚えた。
 僕が荷物に見とれている間に、泰治はすっかりすっぽんぽんになって、コンドームの袋を破いて指に被せると、その上にジェルをたっぷりと垂らし、また僕の上に戻って来た。
「少しずつ、するから……」
「う、うん……」
 これからされる事を想像するとすごくドキドキして、僕のあそこはますます元気になったけど、泰治は元気な僕の息子を素通りして、後ろの窄まりに指を添えた。
 ジェルがヒヤリとして思わず力んでしまう。指が、ゆっくりと僕の中へ入って来た。
「うっ……」
 指を入れるなんて生まれて初めての経験だけど、思ったほど恐くはなかった。でも、あそこで何かが動くと、どうしても排泄感を催(もよお)して、不安になってしまう。
 今まで気にも留めなかったけど、お尻の穴って、思ったよりずっと敏感な場所なんだ。トイレには行ったし、洗浄もしたから大丈夫だと思うけど、緊張してますますお尻が硬くなってしまう。
「マキ」
 呼ばれて泰治を見上げると、唇を噛むように愛撫されて気が緩んだ。
 あそこにばかり目一杯集中していた神経が、唇にも分散して力が抜けたお陰か、泰治の指が一気に奥まで入ってしまった。僕は悲鳴を上げて泰治の首にしがみついた。
 泰治はもう片方の腕で僕の背中を抱くと、キスしながら唇を移動させ、胸の突起に吸い付いた。
「ひゃうっ!!」
 やっ、どうしよう。すごい、きもちイイ……。
 皮膚の薄い乳輪ごと吸引されて、強固に尖らせた舌先で乳首を転がされると、あそこから自然と先走りが溢(あふ)れ出る。
 そんなのは、ここ数日ですっかり認識したつもりだったけど、今は前だけじゃなくて、穴という穴が開くような感覚があって、お尻の奥で未知の生物が蠢(うごめ)いているみたいな違和感すら、痛かゆいっていうか……だんだん、気持ち良くなって来ちゃったんだ。
 ううっ、どうしよう。何だかすごくいけない方向へ目覚めているような気がする。だけど、もっともっと、気持ち良くなりたくてウズウズする。昼間、エロ過ぎると言われたばかりだけど……。
「ね、泰ちゃん……」
「ん……」
「そこ、噛んで……」
 泰治はちょっと動きを止めたけど、何も言わずに僕の望み道りにしてくれた。でも、ちょっと違う。どうしようか迷ったけど、恥ずかしさを押してもう一度頼んだ。
「あのね…そこ、じゃなくてね、ち、ちくびの根元の、とこ……」
 言いながら恥ずかしさでドッと汗が流れた。恥ずかしいだけじゃなく、お尻の中を蠢いている指のせいで、少しもじっとしていられないんだ。体が熱くって仕方ない。
 泰治は言われた通りの場所をやんわりと噛みながら、「ここか?」とくぐもった声で訊いた。
「うっ、ん……」
 イイ感じの強さだったから声が震えた。そのまましこった先っちょを、グリグリ動くくらい強く舐め回されたら、もっと気持ちイイんだけど……。さすがにそんなの頼めない。
 モジモジしていたら、泰治は口を離してしまい、「それだけか?」と聞いた。
 声が笑っているから、僕がどうして欲しいか分かってると思うのに、敢えて言わそうとしている。エロ過ぎるって叱ったくせにと、ちょっとムカついたけど、その腹立ちは三秒も保たなかった。僕は気持ちイイ事に弱いみたいだ。
「…根元のとこ噛んだまま、さきっちょ舐めて…ほし……エッチでごめん!!」
 ただ舐められているより、少し痛いくらいいじられた方が感じるなんて、ちょっと変態っぽい気がして、腕を組んで熱くなった顔を隠した。
 泰治には僕の考えが全てお見通しみたいで、背中の下から腕を引き抜いて僕の片方のおっぱいを掴むと、親指と人差し指で乳首の根元を摘んで引っ張りながら、糸を撚(よ)るみたいに左右に捻った。
「やぁっ! いたぁ〜〜い!!」
 悲鳴を上げて仰け反った。その弾みでお尻の中の指を締め付けてしまったけど、泰治はちっとも構わずに指を動かし続けていた。
 ヒリヒリする胸の痛みと、後ろからのゾクゾク感とで、全身に鳥肌が立った。
「お前、ここを少し乱暴にした方が、よく濡れるもんな? ほら、また先からヤラシイ汁が溢れてきた。もうベタベタだ……」
「…やだぁ、いわないでよぉ……」
 淫乱だと言われている気がして、居たたまれなくて顔を隠したまま半泣きした。
「泣く事ねぇだろう、マキ。別にエッチだって構わねぇんだぜ。これからもっとエッチな身体にしてやるよ。だけどな……」
 泰治は身体を起こすと、組んだ僕の腕を片手でひとまとめにして、ベッドに押さえつけた。
「それは全部、俺の前でだけだ。外では絶対に色香を振り撒くんじゃねぇぞ」
 撒くほど色気なんかないと思うのに、いつもの恐い顔で凄まれたから素直に頷くと、泰治は表情を崩して不意打ちに優しいキスをした。
「その代わり、俺の前ではいくらでも淫らになってイイんだぜ。お前の希望通り、俺がイヤってくらい気持ち良くしてやるからな」
 そう言うと、泰治は僕の片乳を掴んで僕にも見えるように引っ張り上げた。手のひらで押し上げられたおっぱいは、まるで産毛の生えた白桃みたいだった。
 その桃を、握りつぶすみたいに力を入れるから、指の間からはち切れそうに盛り上がった果肉のてっぺんに、突起がキュッとくびり出された。さんざんいじられて赤く腫れたそこは、熟した小ぶりのサクランボみたいに見えた。
 僕は拘束されてる訳でもないのに両手を挙げたまま、息を殺して自分のそこを凝視した。
 普通の男にはついていない、僕だけの性器。嫌だったから、直視するのを避けて来たのに、恥ずかしいのに、目が離せなかった。
 泰治は見せつけるみたいにして、サクランボの表面をねっとりと舐め回した。
「はぁ…ンッ!!」
 期待通りのエッチな光景に、恥ずかしくて目を瞑ってしまった。視界からは消えたけど、薄皮を擦られる刺激に、ビクッ、ビクッ、と身体が跳ねて止まらない。
 咄嗟に泰治の肩に掴まったんだけど、僕の要望通り、乳首の付け根の柔らかいくびれを歯先で銜えたまま、乳首の先っちょの凹みを舌先でグリグリほじるから、イクときみたいに痙攣して爪を立ててしまった。
「やぁっ、あああぁ……んっ、…あんっ……あぁ…んっ……」
 グミを弄(もてあそ)ぶみたいに甘噛みされると、乳首が取れちゃいそうなほど痛いのだけど、解放されて優しく乳倫ごと舐め回されると、先走りがブワッと溢れちゃうほど気持ちイイ。
 零れた汁はお尻にまで回っちゃって、指が出たり入ったりする度に、ぐちゅぐちゅいやらしい音を立てていて、泰治の言う通り、ジェルなんかいらないくらい濡れてると思う。
「泰ちゃ…ぁ…ん……」
 恥ずかしいけど、泰治がエッチでも良いって言ったから、強請るように弾ける寸前のあそこを泰治のお腹に擦り付けた。
「ん? イキたいか?」
「うん……」
 泰治の短く刈り込まれた襟足を撫でながら頷くと、泰治は僕の背中を抱えて上体を起こした。
「マキ、膝立ちで俺の膝を跨げ」
 指を後ろに入れられたまま膝立ちになって、足を伸ばした泰治の太ももの上を跨いだ。かなり股が広がっちゃうからお尻に力が入って、中に入った泰治の指をリアルに感じてしまった。
 うわっ、穴が…すごく広がっちゃってないか?
「俺の肩にしっかり掴まってろ。腰を落とすなよ」
 言われた通りにしたら、また乳首を銜えられて前も一緒に扱かれた。しかも、後ろの指の動きまで激しくなったから、仰け反って悲鳴を上げた。
「やっ! やあ〜っ、やっ、やあぁん、やぁっ、んあぁ〜〜〜」
 感じる場所を同時に三カ所もいじられると、くすぐられているのと同じで、強い快感に耐えられなくて、逃げ出したくて必死で身を捩った。
 ここまでされると三重苦だ。だって、身を捩るとおっぱいが引っ張られて痛いし、腰を引こうにも指が刺さってて動けないし、今にも破裂しそうなあそこまでシコシコされながら、ヌルヌルになった鬼頭や鈴口を、親指の腹でいじくり回されているんだもの。
「う〜〜っ、……たいっ…ちゃあぁ…ん……やぁだぁ〜〜……」
 もう堪らなくて、おっぱいが痛くても逃げようと仰け反った。苦しいのだけどイキたいのは我慢出来ないから夢中で腰を振って、リンボーダンスみたいな格好で身体を揺すった。
 身体が固いから後ろに倒れると思ったけど、泰治が片方の膝を立てていて倒れる事も逃げる事も出来なかった。そのまま、下半身をぐずぐずに溶かされそうな手淫に、あんあん喘ぎながら身悶えた。
 不意に、川で溺れたときの苦しさを思い出して、このまま快感に溺れて死んじゃうんじゃないかと思った瞬間、お尻のある一点から頭へ突き抜けるように、ビリビリと快感が走った。
「ンぁァッッ!!」
 あっと言うに、かつてない勢いで射精してしまった。昨日経験したのと同じように、頭が真っ白になって身体中がショートしたみたいに熱かった。
 そのまま意識を手放しそうになったけど、「マキ!」って泰治の声に引き戻された。
 川の中から引き上げられたときみたいに、思いっきり息を吸い込んだら、心配そうな泰治の顔が目に飛び込んで来た。
「大丈夫か?」
 言いながら僕の頬を優しく撫でて、喘ぎ続けたせいで口の端から流れた唾液を、キスしながら舌で拭ってくれた。僕は朦朧としたまま、何かの本で読んだ通りだなと思った。
 セックスって、互いの粘膜を擦り合わせて、体液を交換する行為だと書かれていたんだ。それを読んだときは、愛し合う行為の筈なのに、ちっとも奇麗じゃないと思ってショックを受けたけど、こんな風に愛してる人とすると、ちっとも嫌じゃないし、嬉しいとすら思う。
 でも、田島とはこんな事できない。
 したくない。
 絶対に、嫌だ!
「たい、ちゃ…ん…」
 キスして欲しくて唇を開くと、すぐに唇が吸い付いてぬるりと舌が入って来た。僕は喜々として舌を絡ませ泰治の唾液を吸った。すると、僕のお尻の中に残ったままの指が動き出して、僕は唇を離して悲鳴を上げた。
 達したばかりで感じ過ぎて辛いのもあるけど、ちょっと触られただけなのに、萎えたそこが半勃ちになって、恐くて涙が出た。さっきも、きっとここをいじられて達っちゃったんだ。
 指が当たっていた場所は括約筋のすぐ近くのお腹側で、AVで見たけど、これってたぶん前立腺だ。でも、こんなにすごいなんて思ってもみなかった。あれはきっと演技だから、本当だなんて思ってなかった。
「まだ、やだ……」
 泰治の弱い上目遣いで、しかも涙付きで抗議したけど、後ろを解すのを止めてくれないどころか、切羽詰まった顔で「我慢でねぇ」と睨みつけられた。
「まだ三本しか入ってねぇけど、我慢できねぇ。痛くしないように色々道具も持って来たのに、悪いが我慢してくれ。痛いかも知れねぇが、許してくれな」
 そんな恐ろしい前置きをして、窄まりから指を引き抜いた。
「うっ、んんっ!?」
 僕はビックリして呻いてしまった。穴が、開いてる…。
 指が引き抜かれても、長い時間無理矢理広げられていたそこは、すぐに閉まる事はなくて、内部に空気の動きを感じて空恐ろしかった。まるで別な器官になってしまったようで、男が抱かれるって、こういう事なんだと改めて思い知ったけど、ここまで来たら後戻りは出来ない。
 泰治は動く力も残ってない僕の身体をベッドに寝かせると、両足を折り曲げて浮かせるように抱え上げ、今更な気がしたけど、その下に持参したバスタオルを敷いた。
 身体が固い僕でも、今は力が入らないからされるがままだ。M字開脚で大胆におっぴろげられた上にお尻を浮かせられて、ぽっかり口を開けたそこが丸見えになってる筈だ。
 泰治はそこに、恐ろしいくらいデッカくて、ジェルと先走りでテッカテカに光った、カッチンカッチンの一物を宛てがった。僕は固唾を飲んで泰治の動きを見守った。
 泰治は鼻息も聞こえて来そうな程の興奮状態だったけど、なぜか動きを止めて僕の小さな雄蕊をじっと眺めた。
 前も後ろも包み隠さず見られているのが恥ずかしくて手で隠そうとしたら、それより先に泰治の手のひらで半勃ち状態のそこを撫でられてしまった。
「あっ……」
 優しく握られてちょっとシコシコされただけで、続けて勃てない筈の僕の息子は、奇跡みたいに復活してしまった。
「マキ…悪いが、俺とこうなった以上、お前のココは一生奇麗なままでいて貰うぜ。けど、俺がうんと可愛がってやるから、安心しろ」
 それは、俺のオンナになった以上は、一生チェリーのまま生きろとの、男としては絶望的な宣告をされたんだけど、僕はあそこを扱かれているから、頭に霞がかかってあんまり深く考えられなかったんだ。
「うん……」
 朦朧としながら頷くと、泰治の熱くて太い鉄塊がずいっと侵入して、あまりの痛さに目から火花が出た。
「ぎゃあぁーーっ」
 思わず去声(きょせい)を上げちゃったけど、痛かったのは最初だけだった。便秘の時みたいに汗が噴き出すほどの苦痛だったけど、一番太い先頭が入ってしまうと、あとは信じられないくらいスルスルと、僕のあそこは泰治の巨根を呑み込んでしまった。
「…痛いか?」
 ほっと脱力したものの、ゼェゼェ呼吸を乱している僕に、泰治は心配そうに尋ねた。
「…わりと、へいき…」
 首を振って素直な感想をもらした。泰治はほっとしたように「そうか」と頷いて、「動いていいか?」と訊いた。
 それはちょっとまだ無理な気がしたから、また首を振って「キスして…」と唇と突き出すと、啄むような優しいキスを何度もしてくれて、その間に僕の萎えかけたペニスも優しく扱いてくれた。
「あっ……んっ、あ…ぁん……」
 手の動きに合わせて僕が善がり声を上げると、泰治は少しずつ窪みを穿つように怒張を抜き差ししはじめた。
 太くて熱い一物が窄まりから出たり入ったりする感覚は、苦しいには違いないのだけど、切ないくらいの高揚感もあって、繋がり合えて良かったと色んな想いの混ざった涙がこぼれた。
 泰治は器用に肘で僕の足を押さえ付け、両手でおっぱいを揉みながら、まるでラジコンを操縦するみたいに、親指でコロコロ転がしたり押しつぶしたりした。ジンジン信号が送られて僕の息子が勃起すると、窄まりも開いて泰治を受け入れるのが楽になった。さすが快感スポットは伊達じゃない。
「あっ、うっ…ぁ……あっ、んっ……ん!」
「お前の中、うねりながら絡み付いて来る……すげぇ…イイ。たまんねぇ……」
 キスで涙を拭いながら囁かれた。
「僕も…きもち、イイよ……」
 最初のときみたいに、お漏らししちゃいそうな強烈な快感はないんだけど、苦しいだけじゃなくて、下半身と脳みそがトロリと溶けちゃいそうな気持ち良さがあった。
 僕の返答に、泰治のスイッチが入っちゃったのか、腰の動きが俄然速くなった。
「マキ、マキ…好きだ……ずっと、ずっと、好きだったんだぜ……」
 固く凝(こご)った睾丸でお尻を叩くくらい、激しく抽挿を繰り返しながら、泰治は唸るように告白した。
 すごく嬉しくて、僕も「好きだよ」って返事をしたかったんだけど、エキサイトしちゃった泰治の突き上げに、ハァハァ浅く呼吸を繰り返すしか出来なくて、言葉の代わりにコクコク頷いて見せるのがやっとだった。
「やっと、俺の、モンになった……」
 泰治は感極まったように言うと絶頂を迎えたみたいで、息を詰めて激しく腰を突き上げた。
 スキンを付けなかったから、お尻の中に熱い迸りが撒き散らされて、その刺激で腸壁が収縮するのを感じた。
 中出しされたんだと思ったら、玉がぎゅっと収縮して、すぐ竿にも昂りを感じたんだけど、射精したかどうかは分からない。泰治の眉間に皺を寄せた、“ イキ顔 ” を見たのを最後に、視界が真っ暗になった。
 気がついたのは、遠くで目覚ましとは違う電子音が聞こえたからだ。
 部屋の電話が鳴ったんだ。
 すぐに瞼を開くと、僕を抱きながら寝ていた泰治と目が合った。
 どれくらい時間が経ったのか分からなかったけど、僕はまだ裸だった。でも、ベッドも身体もさらっとして快適だったから、泰治が後始末してくれたんだろう。って事は、結構時間が経っているんだろう。
 覚醒しきっていない頭で、誰だろうと訝しく思った僕の気持ちを察した泰治が、「夜中過ぎてる。こんな時間の電話に出る事ねぇよ」と言ったので、二人でじっとして留守電になるのを待った。
『あ…田島です。マキちゃん、いるんだろう? 寝てるのかい?』
 聞こえて来たのは、田島の声だった。息を飲んで泰治と顔を見合わせた。恐くて身を固くすると、泰治がぎゅっと抱きしめてくれた。
『出たくないなら出なくてもいいよ。謝ろうと思ってかけただけだから。昼間は興奮して、かなりきつく言ってしまったね。後から反省したんだ。悪かったよ。俺は、君の事を本気で好きなんだ。男だと分かってから、この気持ちは膨らむばかりだった。俺のところへ来て欲しい。ご家族とよく話し合って、良い返事を待ってるよ』
 悪夢の電話だと思った。田島は僕にとって、疫病神以外の何者でもない。だってこのあと、僕は鬼の形相の泰治に「これは一体どういう事だ!?」と問い詰められて、四苦八苦してしまったんだ。

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