INDEX NOVEL

今日の良き日に 〈6〉

 長瀬の家に着くと優一が玄関を開けてくれた。優一の後に続いて新築らしい建材の匂いが鼻にくつ廊下を通り修二の部屋の前まで来ると、叔母の智子がサンドイッチとスープの軽食を乗せたトレーを手に持ったまま、部屋の前に立ち尽くしていた。二人が近づくと智子は顔を上げ、ほっとした顔をした。
 智子の話では、修二は昨日の夕方まではいつもと変わらなかったらしい。夕食に呼びに行った時には既に鍵がかかっていたが、「いらない」と返事があったので、珍しいと思いつつもそれほど気にとめなかった。ところが翌日の昼になっても起きて来ないのが気にかかり、食事を持って行っても「いらない」のひと言で、何を訊いても答えない。業を煮やした義治がスペアキーを探したが見つからず、修二が出て来るのを待つしかない状態なのだと言う。
「あの子ったら、もう丸一日ご飯食べてないの。何を訊いても、『ほっといて』って言うばっかりで…。こんな事、初めてでしょう? 私たちじゃあ、もう、どうしていいか分からなくて。賢ちゃん、何か心当たりあるかしら?」
 心当たりなど山のようにあると心の中で呟いたが、実際の原因は賢造にも分からない。智子の顔には焦燥と疲労の色が見えて、賢造は取り敢えず当たり障りのない “ 心当たり ” を口にした。
「俺もよく分からないけど…たぶん、修学旅行が嫌なんじゃないかな…」
「修学旅行? 何で?」と優一は心底驚いたように聞き返した。
「みんなで大風呂に入るのが嫌なんじゃないかな…。修は、身体の事を気にしてるみたいだから」
 智子と優一は虚を突かれた顔をした後、智子はそんな事でと言いたげな顔をしたが、優一は口元を押さえて「ああ…」と小さく頷いた。
 修二は身体の成長が遅かった。背だけひょろひょろと伸びても身体は細いままで、体毛どころか未だ声変わりをしていなかった。目立った変化がないだけかも知れないが、修二本人は体毛よりも “ 声 ” の方が気になるようで、音楽の授業はもちろん、合唱コンクールが近づくと憂鬱だと零していた。
 夏休みが始まるこの時期に “ 声 ” の悩みである筈がない。目前に控えているのは修学旅行で、適当な理由はこれしか思い浮かばなかった。本当に修学旅行が嫌なのであれば、それはまた別の理由だろうが、この二人には言わない方が良いように思えた。
「まあ、訊いてみないと分からないけど、修はデリケートだからさ。俺が責任持って訊いてみるから、しばらく二人っきりにしてくれる?」
 よく似た面立ちをした母と子は互いに顔を見合わせた後、智子は「じゃあ、お願いね」とすっかり冷めてしまった食事を乗せたトレーを賢造に手渡した。賢造は二人の姿が廊下を曲がって消えたのを確認してからドアに向かって声をかけた。
「修! 俺だよ。今、俺しかいないから、ここ開けて!」
 すぐにはドアは開かなかった。寝ているのかと思い、片腕でトレーを支えノックをしようと拳を上げた時、鍵の開く音がしてドアが薄く開いた。賢造は逸る気持ちを抑えてドアを開き、努めて明るく「どうした?」と声をかけながら部屋に入った。
 修二は賢造の方を見ようとはせず、さっさとベッドへ腰をかけた。賢造はその後に続いて入るとローテーブルにトレーを置いて修二の隣に腰を下ろした。
「腹、減ってるだろ?」
「…ん。減ってない。いらない…」
 賢造はそんな訳ないだろと、修二の様子を眺めた。すっかり憔悴した様子で顔色も優れない。本当に食欲がないのなら、どこか身体の具合が悪いのではと焦った。試験前も疲れているようだったが、たった二週間会わなかった間に一体何があったのか。
「具合、悪いのか? 医者に行った方がいいんじゃないか?」
 熱はないかと修二の額に手を当てると、修二はその手をはね除けて、「大丈夫!」と叫んでベッドへ突っ伏した。その拒絶に賢造は酷くショックを受けた。
 こんな態度を取られたのは初めてだった。いつだって賢造は修二にとって特別で、すべてを曝け出してくれるものと自負していた。でなければ、智子や優一に「俺に任せろ」などと偉そうな口はきけない。
 目の前の細い背中に、目に見えない一線を引かれた気がして狼狽えた。そう言えば、修二は自ら助けを求めた訳ではない。自分にすら内心を覗かれたくないのだと察すると、かける言葉が見つからなかった。
 ただ呆然と見詰めるだけの賢造の視線を感じてか、修二は徐に起き上がり賢造の方へ振り向いた。先ほどと打って変わって黙したまま語らない賢造を見て、訝しげに賢造の名を呼んだ。
 その不安げな声音に、賢造は安堵のため息をついた。放っておいて欲しいのか、助けて欲しいのか、分からないのは修二自身なのだろう。家族を閉め出した中で、こうして部屋へ入れてくれたのだから、自分はまだ必要とされている、そう思うと少しだけ余裕が出た。
「…何でもないなら、それでいいんだ。だけど、みんな心配してる。丸一日何も食べないのは身体に良くないよ。食欲がなくても、せめてスープくらい飲んでくれないか」
 穏やかに言い含めるようにしてコーンスープの入ったカップを差し出すと、修二は大人しく受け取って静かに飲み始めた。やはり空腹だったのだろう。スープで刺激されたらしい胃袋は、用意された食べ物を次々に受け入れていった。
 賢造は修二が夢中で食事をしている間、あまり馴染みのない修二の部屋を眺めていた。昔の部屋より少し広めだが、家具が変わらないからあまり違和感はなかった。
 昔と違うのは、部屋に鍵がかかるようになった事。大叔母の部屋と同様に一年中快適な室温が保たれる事。隣の優一の部屋とは洗面所とトイレを挟んで行き来できるようになっていて、こちらのドアにも鍵がかかるようになっている事。
 立て籠もるにはもってこいの造りだと、賢造は心の中で苦笑した。叔父も叔母も、大人しくて素直な息子が、そんな事をしでかすとは夢にも思っていなかったんだろう。実際、賢造も修二が籠城するとは思っても見なかった。
 誰にも邪魔されず独りでいたいと思う時は賢造にだってある。どんなに親しくとも打ち明けたくない悩みも。苦しんでいるのなら助けてやりたいと思うけれど、求められていないのなら無理に聞き出すのは止そうと思った。
 食事を平らげて人心地ついたような顔をしている修二にひとまず安心して、賢造は空になった皿を積んだトレーを持って立ち上がった。
「横になって眠れるようならそのまま寝たらいい。叔母さんにはもう少し放っておいてくれるよう、俺から上手く話しておくよ。でも、食事はきちんと取れよ」
 じゃあな、と言って賢造が部屋を出て行こうとした時、修二がその背に飛びついて危うくトレーを落としそうになった。
「賢造! どうしよう! 僕、変なのかな…。どうしよう…どうしたらいい?」
 泣きながらどうしようと繰り返す修二から、その悩みの全てを聞き出すには、それからたっぷり二時間かかった。


「精通がない…」
 最初は意味が飲み込めなかった。分かった瞬間、頭が熱くなってどっと汗が吹き出した。慌てるな、慌てるなと内心で呪文のように唱えながら、「そうなんだ…」と答えるのが精一杯だった。
 修二の悩みは三つあった。
 一つ目は、もう十五歳になるというのに著しく成長が遅い事。賢造の予想は外れてはいなかったが、話はもっと深刻だった。“ 声 ” や “ 体毛 ” などよりも修二を悩ませていたのは、男としての “ 性 ” そのものだった。
 修二は血の繋がった賢造の成長を見るにつけ、自分もいつか、ああなれるのだろうと思っていた。ところが、いつまで経っても賢造に追いつけない。それどころか、普通の男子が自然と迎える第二次成長すら迎えられない。気になって堪らず図書館で文献を漁ったが、明快な回答も解決策も得られず、闇雲に知識が増えただけだった。
 性に関する話は真面目なものも含め、一番親しい賢造ともした事がないから、クラスの男子とは勿論した事がない。密やかに交わされるクラスメートのそうした話題を聞きかじっては、悶々とした思いが日々積もるだけだった。何故か家族の存在は頭から抜け落ちていた。優一に相談するという選択肢は端から存在しなかった。
 忙しく過ごしている間はいい、何も考えないで済むから。三年生になった今は、受験に没頭するべきだからと無理矢理自分を納得させていた。そこへ美弥子から『賢造が女の子と付き合っているらしいよ』と聞かされて、心の中で何かが砕けた。
「ショックだった…。すごく複雑な気分だった。その話が本当なら、賢造が僕に内緒にしていた事になる。それが悲しかったし…嫌だった。女の子と付き合うって事は、賢造は…そういう事が…出来るって事だよね…。ちゃんとした “ 男 ” なんだよね。上手く言えないんだけど…悲しくて、悔しくて、なんか、どんどん置いて行かれる気がして…凄く嫌だった。
 だから、つい…お祖母ちゃんに、僕は…普通じゃないかも知れない、ちゃんとした “ 男 ” になれないかも知れないって、言っちゃったんだ。そしたら、お祖母ちゃん『きっと、私のせいだね』って…。でも、どうしてって訊いても、それ以上何も答えてくれないから、気になって何度も尋ねたんだ。だって、僕は本気で悩んでるんだよ? 知りたいじゃない?! そうしたら、お祖母ちゃんの様子が…どんどん、変になって…」
「様子が変って、この間みたいに…なるって事か?」
 修二は嗚咽を堪えながら小さく頷いた。賢造は先日訪ねた時の、憑かれたような大叔母の表情を思い出して背筋が寒くなった。
 この美弥子が漏らした言葉の真意と、それに起因するらしい精神の変調が、二つ目の悩みだった。
 病気による美弥子の言語障害はリハビリにより回復していた。外見的には左半身の麻痺以外なんの異常も見られないが、夏前の修二との遣り取り以降、最初はごく普通に成立していた会話が、だんだんかみ合わなくなるのだと言う。時には話しかけても何の反応も示さなかったり、辻褄の合わない独り言を呟いていたりする。口止めに協力してくれている家政婦が言うには “ 呆け ” の症状に似ているらしい。
 賢造は美弥子の症状を両親に話すべきだと諭した。修二はその変調を自分が原因であるかのように勘違いしているが、美弥子は脳梗塞を患ったのである。精神と言うより脳の損傷からくる症状である可能性が高い。悪化しているのならもう一度入院させた方が良いのではないかと。修二は駄目だと首を振った。
「そんな事したら、うちの親はお祖母ちゃんを二度と病院から出さないよ…。変になるのは、ごくたまになんだ。賢造と会った時も、ちょっとだけだったでしょう? 最近はまた落ち着いて来たんだよ。きっとそのうち、また良くなると思う。だから…」
 目を離したくないから、修学旅行には行きたくない。それが三つ目の悩みだった。
 修学旅行は五日後だ。行きたくないと言えば理由を問われるだろう。本当の事など言えないし、上手い言い訳も見つからない。思い悩むうち食事も喉を通らなくなった。食べなければ心配して根掘り葉掘り訊かれる。もう、どうしたらいいか分からなくて籠城したのだと、俯いて話す修二の頭を撫でながら、賢造もその悩みの重さと深刻さに考えあぐねた。
 賢造は憂いを湛えた修二の横顔をじっと見詰めた。修二の苦悩する姿は哀れでありながら愛おしかった。身体の事を話すのは恥ずかしかったに違いないが、それを押して打ち明けてくれたのだ。自分の持てる全てで救ってやりたいと心底思った。大叔母に『あの子を守って』と懇願されたが、言われるまでもないく修二の守護者は自分しかいない。
 三つの悩みの中で、一番大きいのは『精通』だろう。二つ目の大叔母の言葉の真意を聞き出すのは、あの状態ではきっと無理だ。結局は近い将来、叔父たちに話さなければならないだろうと思うが、もう暫く様子を見ても良いように思えた。三つ目は、了承を得られる適当な言い訳を考え出せばいいだけの事だ。
 目を閉じて記憶を浚う。自分が『精通』したのはどんな状況だったか…。自慰だ。無理矢理でも何でも、出してしまうのが一番早い。
 まだ少ししゃくり上げている修二の耳元に唇を寄せて、賢造は何でもない話をするように「修は自分で慰めた事、ないの?」と聞いた。
『慰める』の意味が分からなかったのだろう、賢造を仰ぎ見てきょとんとする修二に「オナニーした事ないの?」と言い直すと、修二は瞬時に真っ赤になって首をぶんぶんと横に振った。
「するといいのに。みんなしてるよ。俺もしてるし…」
 悪友と交わす時とは比べものにならないくらい、爽やかに下の話を聞かせる自分が滑稽に思えたが、赤い顔のまま首を振り続ける修二に、恥ずかしい事でも何でもないごく普通の事だからと、身振り手振りを交えて手解きした。
「気分を楽にして、好きな女の子とエッチしてるとことか想像してさ、気持ち良くなる事だけ…」
「想像できない」
 修二はすっぱりと賢造の言葉を遮った。非難の隠った瞳に見上げられ、賢造は居たたまれずに慌てて立ち上がった。
「ちょっと待ってて! すぐに戻るから」
 賢造は逃げるように部屋を出ると、優一がいるであろう居間へ向かった。羞恥に苛まれて鼓動が早くなっている。あんな目で見られたら堪らないと思った。少し腹立たしくもあったが修二の気持ちも分かる。猥らな想像を逞しくできたらこんなに悩んではいない筈だ。それならもう “ アレ ” しかないだろ。
 居間のソファで雑誌を読んでいた優一の腕を無言のまま引っ張り、物問いたげな叔母を残して優一の部屋へと連れ込んだ。賢造の様子に只ならないものを感じた優一が心配して「どうだったの? 修二、何だって?」と問いかけたのに対し、賢造は開口一番「エロ本貸して」と言った。
「はあ? 何?」
 驚いて素っ頓狂な声を上げる優一に、賢造は唇に人差し指を立てて優一を黙らせた。
「だから、エロ本! オカズだよ! 修二、やった事ないんだって!」
 洗面所を隔てているが隣に修二がいるのだと声を落としたが、内心の苛つきを押さえられない声音で、修二の最大の悩みを掻い摘んで説明した。優一は訳が分からないと言った風情で聞いていたが、理解した途端、茫然とした顔で賢造を見詰め、「そうか…そんなの、思ってもみなかった…」と脱力したようにベッドに腰を下ろした。
「自分で出来れば問題ない訳だから。ねぇ、どこ? 持ってるでしょう?」
 そう言いながら賢造がベッドの下を覗き込むと、果たしてそれらしき雑誌の類が積み重なっていた。ビンゴと呟きながら二、三冊引っ張り出すと頭上から「おい、おい」と優一の慌てた声が聞こえた。
「ないとできないだろ?」と賢造が真顔で言うと、「そりゃそうだけど…」と語尾を濁しながら卑猥な言葉が踊る紙面をちらりと眺め、悩ましげに顔を曇らせた。
 優一は修二と同じ柔和な雰囲気をもった美男子だった。智子に似ているから逞しさはないが、二十歳という年齢に見合った体躯と男っぽさがあった。そのせいか、優一とそれほど親しくなくても、その手の話をするのに抵抗を感じなかった。
「僕が悪かったのかな。賢造がいるから大丈夫だと思って、あまり話し相手にならなかったから…」
 自分の役不足を指摘されたようで、賢造はムッとして優一を睨みつけたが、優一は苦笑して違うよと首を振った。
「責めてるんじゃないよ。分かるんだよ。お前も、話しづらかったんだろう? あの子にそういう話をするのが。あの子の学校の友だちもそうなんじゃないかな。自分の弟を捕まえて言うのも何だけど、あの子は綺麗過ぎるんだ。外見も中身もね。僕は時々、この子も普通にトイレに行ったりするんだよなぁ、ちゃんと男の子なんだよなぁなんて、馬鹿みたいな事を考えたりしたよ。
 それぐらい…何だろうね……特別な存在に見ていた。だから、いつまでも男らしくならないのを、あの子が気にしているのは知ってたけど、下半身の悩みだなんて想像もしてなかった。だって、とても結びつかないじゃないか。あの子が自分で抜いてる姿なんて…」
「修は普通の、歴とした男だぞ!」と賢造は怒りを滲ませて優一の話を遮った。聞き捨てならなかった。確かに猥談をしづらかったのは事実だが、そんな風に思っていたからでは断じてない。そんな見方をするから、修二は自分を出せないんじゃないか。
「そうだな…」
 消え入るように呟いた優一を尻目に、賢造はエロ雑誌を掴んで立ち上がった。ドアノブに手をかけた賢造に優一の声が追った。
「賢造はあの子とずっと一緒にいるから、分かって貰えないだろうけど、僕にとってあの子は “ 神隠し ” に遭った子なんだよ。可愛がっていた弟が、ある日突然目の前から消えて、三年経って大きくなって帰って来た…そんな感じ。あの子が祖母の元から戻って来た時、とても戸惑ったよ。僕はもう六年生になってて、 “ 神隠し ” に遭った理由を知っていた。両親も承諾した話だけど、修二を取り上げた祖母を許せなかった。なのにあの子は祖母を慕う。それが不快にも不憫にも感じた。
 勿論、僕だって祖母の事は色々と聞いているよ。気の毒な人だとは思うけど…やっぱり良くは思えない。僕はあの二人と、どう接していいのか分からないまま、今日まで来てるんだ…」
 賢造は突っ立ったまま優一の苦悩を聞いた。先ほどまでの怒りは泡のように消えて、驚きとともに当然のように修二を独り占めしていた罪悪感が湧き上がった。振り返ると優一が真っすぐに賢造を見ていた。
「僕は修二が可愛いよ。たった一人の弟だ。何かあったら力になりたいと思ってる。でもね、あの子は僕らを頼らない…。だから賢造、あの子を頼むよ…」
 僕らはあの子に負い目があるんだと、自嘲気味に笑う優一に同情を感じたが、修二との距離を縮める努力を諦めたように聞こえて承伏しかねた。
「優兄…そんな風に言わないでよ。だったら、今すぐ力になってくれない? さっき話した事だけど、叔母さんには内緒にしといて欲しい。それと、やっぱり修学旅行には行きたくないんだって。両方含めて叔父さんと叔母さんに、優兄から上手く誤魔化して説明して貰えないかな」
「…分かった。何とか説明してみるよ」
 困ったように笑う優一に、くれぐれも修二の悩みは秘密にしてくれるよう頼んで部屋を出た。
 優一も、叔父も叔母も、修二を大切に思ってる。勿論、修二だって同じだろう。本当の家族なんだから。なのに何故、想う気持ちはすれ違ってしまうのか…。
 賢造は大きなため息をついた後、鼓舞するよに頭を振って静まりかえった修二の部屋のドアを叩いた。

BACK [↑] NEXT

Designed by TENKIYA